既に2年以上前の話ではありますが、第180回国会において、「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」が成立、平成24年9月5日に公布されました。この法律は平成25年9月1日から施行されています。そこで、今回はこの改正の内容について概観しておさらいしたいと思います。

 今回の改正の主なポイントは、次のとおりです。
1)目的等に具体的文言追加
2)災害時への配慮
3)動物の占有者・所有者への責任の加重
4)動物販売業者の責務の強化
5)動物取扱業の規制を第一種(登録)と第二種(届出)に細分化
6)周辺の生活環境の保全等に係る措置の強化
7)犬及び猫の引取りについて
8)罰則の強化

1)目的等に具体的文言追加

 第1条の目的規定に、「動物の遺棄の防止」、「動物の健康及び安全の保持等」、「生活環境の保全上の支障の防止」、「人と動物の共生する社会の実現」という文言が追加され、より具体的なものになりました。
 また、第2条の基本原則に2項が追加され、動物を取り扱う場合には、「その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない」と規定されました。

2)災害時への配慮

 第6条2項3号に、動物愛護管理推進計画に定める事項として、災害時における動物の適正な飼養及び保管を図るための施策が追加され、第38条2項5号に、動物愛護推進員が災害時にその施策に必要な協力をすることという活動が追加されました。

3)動物の占有者・所有者への責任の加重

 第7条において動物の所有者又は占有者の責務等に新設規定が追加され、動物の逸走防止のための措置、終生飼養をすること、繁殖に関する適切な措置を講ずることに努めること等、責任が加重されました。

4)動物販売業者の責務の強化

 第8条で動物販売業者の責務として、購入者に対し、動物の種類、習性、供用の目的等に応じて、必要な説明をしなければならないこととし、従前の努力義務が強化されました。また、2項が新設され、購入者の購入しようとする動物の飼養及び保管に係る知識等に照らして、購入者に理解されるために必要な方法及び程度により、その説明を行うという努力義務が追加されました。

5)動物取扱業の規制を第一種(登録)と第二種(届出)に細分化

 今回の改正で最も大きな変化があった動物取扱業の規制は次のとおりです。
 まず、現行の動物取扱業を第一種動物取扱業(登録制)とし、一定の飼養施設を設置して動物の取扱業を行おうとする者(第一種動物取扱業者等を除く)を第二種動物取扱業者(例えば動物愛護団体等の非営利団体を想定)として、届出制を導入しました(第24条の2以下)。
 次に、第一種動物取扱業者で犬猫等販売業を営もうとする場合には、「販売の用に供する犬猫等の繁殖を行うかどうかの別」や「犬猫等健康安全計画」を申請書に記載しなければならなくなりました。
 また、登録拒否事由及び取消事由に、化製場法違反や狂犬病予防法違反をした者が追加されました(第12条5号等)。
 さらに、第一種動物取扱業者のうち犬猫等販売業者に対しては、購入者に対しあらかじめ動物の現在の状態を直接見せるとともに、対面により書面等を用いてその動物の適正な飼養又は保管のために必要な情報を提供しなければならないこと(第21条の4)、犬猫等健康安全計画の定めるところに従い、その業務を行わなければならないこと(第22条の2)、犬猫等の健康及び安全を確保するため獣医師等との適切な連携の確保を図らなければならないこと(第22条の3)、やむを得ない場合を除き、販売の用に供することが困難となった犬猫等についても終生飼養の確保を図らなければならないこと(第22条の4)、繁殖を行う場合に、出生後56日以内は引渡し又は展示をしてはならないこと(第22条の5)、等の規制が具体的に新設されました。

6)周辺の生活環境の保全等に係る措置の強化

 第25条の「周辺の生活環境が損なわれている事態」として、「騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等」という例示が追加され、3項で「多数の動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱する等の虐待を受けるおそれがある事態」が生じていると認めるときは、都道府県知事はその事態を生じさせている者に対し、改善命令や勧告ができることになりました。

7)犬及び猫の引取りについて

 都道府県等が、犬猫等販売業者から犬又は猫の引取りを求められた場合その他の終生飼養の責務の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合には、その引取りを拒否することができるとし、安易な遺棄がなされないよう規定されました(第35条等)。
 また、都道府県知事等は、引取りを行った犬又は猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの等についてはその飼養を希望する者を募集し譲り渡すという努力義務が新設されました(第35条4項)。

8)罰則の強化

 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者に対する法定刑について、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に引き上げる(第44条1項)など、各罰則が重くなりました。
 また、愛護動物に対する虐待の例示が加えられました(第44条2項)。

 以上のように、最近の動物の愛護及び管理に関する状況に鑑み、動物の適正な飼養及び保管を図るため、様々な改正がなされているので関係者の方はご留意頂ければと思います。