日本に旅行に来た人が、日本を気に入ってしまい、そのまま在留資格を変更して日本に滞在し続けることができるか、という相談を受けることがあります。
その前に、語句の説明をしますと、いわゆる「ビザ」というのは査証(国が自国民以外に対して、その人物の所持する旅券が有効であり、かつその人物が入国しても差し支えないと示す証書)のことなので、厳密には在留資格とは異なります。ただ、一般的には、在留資格のことを「ビザ」と呼んでいるケースが多く、混同されています。今回は、「在留資格」の話です。
通常、日本に旅行に来る人は「短期滞在」という在留資格で入国します。これは「短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習又は会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動」を行うための在留資格で、最長90日間の滞在が認められます。
短期滞在で入国したけれども、現地(日本)で出会った人と恋に落ちてしまい、結婚することになった、とか、たまたま良い企業と巡りあい、就職することになった、という相談を受けます。
悲しいことではありますが、行政書士としては、こういう相談が来た場合必ず「本当の話かどうか」を疑うことになります。
残念ながら、嘘をついて日本に滞在しようとする外国人の方も結構いらっしゃるので、虚偽申請にならないように、そういった事案に巻き込まれないように、常に最新の注意を払わなければなりません。
特に、結婚の話は、日本人の側がその気でも、相手の外国人は嘘をついていて、「日本人の配偶者等」の在留資格を得たら行方をくらませてしまった、なんていう話も珍しくありません。
しかし、これが本当に恋に落ちて結婚し、その後幸せな家庭を築いているケースも知っていますので、一概には言えず、もちろん外見からは内心は把握し辛いため、判断が困難です。騙す意図はなくても結果的に婚姻後すぐ別れてしまうケースもあるでしょう。
話を戻しますが、在留資格を変更する場合の法の規定は次のようになっています。
入管難民法第20条(在留資格の変更)
第3項 前項の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。
つまり、通常は、在留資格の変更の要件としては、①取得を希望する在留資格についての「在留資格該当性」と②変更を適当と認めるに足りる「相当性」が必要になります。
が、短期滞在から変更する場合は、さらに③「やむを得ない特別の事情」が必要になるわけです。
では、この「やむを得ない特別の事情」とは何か、という話になりますが、出版されている逐条解説では次のように書かれています。
入国後の事情変更により当初の在留目的が変更したことに合理的理由があり、かつ、いったん本邦から出国して新たな入国手続をとらせるまでもなく引き続き本邦在留を認めるのが相当であると認められるような事情をいう
また、判例上も、
①短期滞在中に新たに在留資格の変更を必要とするような事情が発生し、②その申請者が一旦出国してしまうと、変更申請に係る在留目的で再度入国することが困難な事情が存在すること
とされています。
一応、例として上述したような婚姻のケースも挙げられていますが、もともと婚約関係にあったならともかく、日本で出会っていきなり結婚する、というのはやはり認められにくいと思われます。
また、婚姻以外のケースとしては、大学受験目的で短期滞在で入国しそのまま合格したので引き続き滞在する、という場合が挙げられています。
いずれにしても、自分の人生を左右することになると思われますので、慌てて決断せず、一度帰国して改めて手続きをしても遅くはないような気がしますが、いかがでしょうか。