もうすぐ次長の任期も満了なので、自分の備忘のために、今日もADRの話題です。
裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律、いわゆるADR法には、その3条1項で裁判外紛争解決手続に関する基本理念が定められています。
つまり、ADRにおいて最も大切なこと、という意味です。
(基本理念等)
第3条 裁判外紛争解決手続は、法による紛争の解決のための手続として、紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重しつつ、公正かつ適正に実施され、かつ、専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図るものでなければならない。
(2項略)
ここには、3つのことが書かれています。
すなわち、
① 紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重すること
② 公正かつ適正に実施されなければならないこと
③ 専門的な知見を反映して紛争の実情に則した迅速な解決を図るものでなければならないこと
です。
1.紛争の当事者の自主的な紛争解決の努力を尊重すること
当事者でない第三者に、紛争の中身を詳らかにして判断してもらう、という受身の姿勢で当事者が臨むのであれば、それは裁判などの既存の司法システムで事足りる、そちらに任せれば良い、ということです。せっかく裁判ではなく民間紛争解決手続を選択したのだから、その選択をした当事者の自主的な紛争解決への努力を、大切に扱いましょうということを意味しています。
2.公正かつ適正に実施されなければならないこと
公正というのは「公に正しい」ということですが、つまり「不正やごまかしがない」ということで、例えば調停を実施する事業者が暴力団等の関係団体ではない、調停人などの手続きを実施する人が利用者・紛争当事者の関係者でない、紛争解決にあたって利用者・紛争当事者に何らかの圧力をかけたりしない、ということを意味しています。
適正というのは、主に「当事者の公平な取扱い」と「手続保障」を指していて(「ADR法概説とQ&A」より)、自分の言いたいことやその証拠を示す機会などが適切に与えられていること、です。似たような言葉ですが、区別し正確に理解しておきたいものです。
3.専門的な知見を反映して紛争の実情に則した迅速な解決を図るものでなければならないこと
紛争解決手続は、趣旨や目的、対象とする紛争、当事者の属性、手続きの内容等に応じて様々な特徴があることを踏まえて、それらを解決に活かせるように、多様な分野の専門家の知見を反映させられるものにしましょう、という意味です。
この3つのことを、ADRという手続きにおいては最も大切だと法は想定している、ということは改めて認識しておかなければならないと思いました。