Lighthouse 割と関係者にしか分からない話かもしれず恐縮なんですが、ADR法に基づく認証紛争解決機関(「行政書士ADRセンター東京」など)は、事業年度ごとに終了後の事業報告書を法務省(正確には法務大臣)に提出しなければなりません(同法20条)。

 また、それとは別に、事業者の状況に変更が生じていれば、変更事項によっては変更届などを出さなければいけないことになります(13条、12条)。

 この変更事項の中身なのですが、少し前までは、事業者の役員の兼職状況の変更についても対象とされていました。
 つまり、事業者が法人の場合、法人の役員などが認証紛争解決機関の運営主体を構成するので、その役員が個人として他の事業をしていたり、他の法人等の役員を兼職しているような場合は、紛争の中身に影響する可能性があると好ましくない、ということでその兼職状況を詳らかにしておく必要があるわけです。

 確かに趣旨はよく理解できるのですが、実際に運営に携わってみると、これが意外に大変な作業を要するということがよく分かりました。

 例えば、行政書士ADRセンター東京では、運営主体である東京都行政書士会には会長、副会長、理事、監事という役員が総勢60名程度いるわけです。そして、どちらかというとベテランの先生やご活躍の先生がいらっしゃるので、東京都行政書士会の役員以外にもどこどこの会社の監査役に入っているとか、何とか協会の理事になっているとか、ご自身で会社を経営しているとか、という兼職が複数あるわけです(そもそも行政書士事務所の経営自体が兼職なので)。ダブルライセンスの人は、税理士とか社会保険労務士とか司法書士とか海事代理士の事務所も含まれてきます。

 そして、少し前までは、この状況に変更がある場合は、細かく変更届を出さなければなりませんでした。つまり、A先生がB会社の取締役から監査役に変わった、とか、C先生が理事を務めるD協会の所在地が移転した、とか、変更がある場合には、都度疎明資料を添えて、変更届を出す必要があったわけです。

 私が理事として事務を担当していた東京都行政書士会の行政書士ADRセンター東京では、理事一人あたり平均4件くらいは兼職先がありましたので、単純計算で60×4=240件の兼職先に少しでも変更がないか常にチェックする作業が生じていました。もちろん、役員の婚姻や離婚、住所移転等も変更届の対象です(これは今も)。

 法務省に呼ばれ、ADR法令の改正について意見を述べる機会がありましたので、そのお話をさせて頂いたところ、今年の1月の規則改正により、なんと役員等の兼職状況に関する変更届が廃止されることになりました(かいけつサポート通信10号等参照)。
 他にも改正して頂きたい点は多々ありましたので、そんなことだけ言うなとお叱りを受けそうではありますが、事務作業的に楽になったのは間違いないので今回からは少し負担が軽減されることになります。
 次に同じような機会があったら、申し述べたいことをもう少し整理して、きちんとお伝えできるように準備したいと思っています。