charcoal-flame たまにはちゃんとしたエントリを。

 学校の先生には、法律で「懲戒」を行うことが認められています(学校教育法11条)。
 この「懲戒」には、2つあって、「法律上の懲戒」と「事実上の懲戒」があります。

 「法律上の懲戒」というのは、法的な効果を伴う懲戒のことで、退学、停学、訓告というものが該当しますが、これらは校長先生しか行うことができません(学校教育法施行規則26条2項)。

 このうち、退学というのは、その学校での身分を失わせるという最終的な厳しい処分になりますので、公立学校においては行うことができず、国立学校と私立学校においてのみ行うことができます。また、退学処分を行うためには、次のようないずれかの基準に該当しなければなりません(同26条3項)。

 1.性行不良で改善の見込みがないと認められる者
 2.学力劣等で成業の見込みがないと認められる者
 3.正当の理由がなくて出席常でない者
 4.学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

 次に、停学というのは、登校を一定期間停止させ、その学校での教育を受ける権利を停止する処分です。これもまた、厳しい処分になりますので、義務教育段階の児童生徒に対しては行うことができません(同26条4項)。
 そして、訓告とは、口頭による注意のことなのですが、法律上の懲戒なので、懲戒処分を受けたということが記録として指導要録(児童生徒の学習状況等を記載した公式の記録)に記載されます。

 ちなみに、似たような処分として「出席停止」というものがありますが、こちらは校長先生や教員ではなく「教育委員会」が行うもので、児童生徒に対してではなくその「保護者」に対して命じられます(学校教育法35条)。やはり基準が定められていて、次のような行為を繰り返し行うような場合で他の子どもの教育の妨げになるケースに認められることになります。

 1.他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為
 2.職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為
 3.施設又は設備を損壊する行為
 4.授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

 では、「事実上の懲戒」というのは、どのようなものでしょうか。これは、叱責したり、起立や清掃を命じたりするという、法的効果を伴わない事実行為ということになります。これらは校長先生のほか、教員にも認められています。

 しかし、ここで重要なことは、「体罰」は禁止されている、ということです(同11条ただし書き)。
 そこで、どこまでが「事実上の懲戒」として許され、どこからが「体罰」として禁止されるのか、ということが問題になります。

 この点、日本では1879年(明治12年)の教育令以来、一貫して体罰は禁止されてきたのですが、その線引については曖昧なまま議論が重ねられてきました。現在は、一応の基準として、文部科学省から平成25年3月13日付で「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)」というものが出され、この中で具体的に記載されるに至っています。

 それによれば、通常の懲戒権の範囲内としては、次のようなものが認められています。

注意、叱責、居残り、別室指導、起立、宿題、清掃、学校当番の割当て、文書指導

 ただし、これらもその態様によっては認められない可能性もありますので注意が必要です。

 懲戒と体罰の区別については、「当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに」判断し、「単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべき」としています。
 具体例が「学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例」としてこちらに記載されていますので、学校の先生はチェックしていただいたほうが良いかもしれませんね。

 ちなみに、今なら大問題ですが、私が子どもの頃のできごとで覚えているのは、隣のクラスの先生が、騒いで静かにしないそのクラスの児童に対して、上履きを咥えさせていたことです。ビンタとかは日常茶飯事でしたが、さすがにそれは一度だけで、子ども心に結構ショッキングでした・・・。